銀の光と碧い空の雑記

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希釈冷凍機と核断熱消磁による超低温への冷却

物理学アドベントカレンダー8日目です。

物理学 Advent Calendar 2014 - Adventar

前回のエントリで液体ヘリウムによる4Kまでの冷却ができました。が、固体ヘリウムを作るにはここからさらに冷却する必要があります。今回は0.1mK以下まで冷却することのできる希釈冷凍機と核断熱消磁を紹介します。

この2つ、希釈冷凍機は10mK以下(おおよそ数mK程度)まで連続的に冷却でき、核断熱消磁冷凍により数mKから0.1mK以下まで冷却することができます。核断熱消磁冷凍は、連続的には冷却できない仕組みのため、組み合わせて使っています。

希釈冷凍機

液体ヘリウム3と液体ヘリウム4の混合液を使い、ヘリウム3がヘリウム4へ希釈する際の潜熱による冷却を行います。現在のところ、100mK以下の温度を連続的に維持できる唯一の手段とされています。ちょっと物理的な背景を説明するのに限界を感じてきたのでこちらをどうぞ。

Fukuyama Lab. / Research / Low temperature

昔は手作りで装置を作ったりしていたようですが、今では販売されています。

http://www.oxford-instruments.jp/products/cryogenic-systems/dilution-refrigerators-10-25mk

大陽日酸株式会社 超低温分野 希釈冷凍機

単に低温を得るだけであれば、そこまで大型の装置も必要ではなくなってきているようですが、低温下でなにをやりたいかによって大き目の装置で高い冷却能力が求められたりします。

核断熱消磁

これもまず物理的背景はリンク先をどうぞ。

Fukuyama Lab. / Research / Low temperature

http://www.s.kanazawa-u.ac.jp/phys/physics_MC/ult_html/world.html

超低温物理学への招待

おおざっぱには、銅のかたまりを希釈冷凍機温度で強力な磁場下に置き、希釈冷凍機と熱的に切り離した後にその磁場を下げてゆくと、下げた磁場に比例して温度が下がっていく、という流れになります。

いくつか肝となる技術があるのですが、まずは銅のかたまり。これはリンク先の説明にもありますが、加工しやすく、熱伝導がよくて...といった理由で銅が選ばれています。低温物理の実験では、その安さ・加工しやすさ・低温での熱伝導のよさから銅が実験装置によく使われています。ちなみに熱伝導だけでいうと銀や金がさらによいですが、値段と加工しやすさの問題で、適した部分にピンポイントで使われています。

また、単に銅といってもそこらへんにある銅そのままではなく、アニーリングなどいくつかの処理を施しています。

http://www.s.kanazawa-u.ac.jp/phys/physics_MC/ult_html/bandle.html

さらにポイントとなるのが、希釈冷凍機側との熱伝導をON/OFFする熱スイッチになります。これは、希釈冷凍機温度まで冷却する(予冷と呼ばれる)時は十分よい熱伝導を維持してほしいのですが、いったん核断熱消磁冷凍を始めると熱的に切り離しておく必要があります*1。この熱スイッチの性能により、核断熱消磁による冷却の最低温度や維持時間が決まってきます。

という軽い感じで今日のアドベントカレンダーをしめます。

*1:じゃないとより高温の希釈冷凍機から低温側の核断熱消磁側に熱が流れて冷えなくなってしまう

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